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Rhätische Bahn Series (RhB Series)
レーティッシュ鉄道 (RhB) の世界

Photo: Axel Bozier
2013年の「氷河特急」からはじまったKATOのレーティッシュ鉄道シリーズ。
「ベルニナ急行」や普通客車・貨物列車など多くの製品を展開し、日本のみならず世界中から愛される人気シリーズとして成長してきました。
その当初から「いつかは」と熱望されてきたレーティッシュ鉄道で最も人気が高く、その長い歴史を象徴する電気機関車「Ge6/6 I レーティッシュ・クロコダイル」が満を持して登場いたします。
KATOは今年 Nゲージ誕生60周年を迎えます。
この60年の間に培った技術を、コンパクトな車体にぎっしり詰め込んで、皆さまのもとへお届けいたします。


険しい山岳を“ワニ”がゆく?! ――クロコダイルとは

ワニの顔のような姿から
“クロコダイル”と
呼ばれています

Ge6/6-I形電気機関車は、“レーティッシュ・クロコダイル”という愛称で親しまれています。クロコダイルというのはこの車両のみをさす言葉ではなく、このようにワニのようなボンネットを持ったかたちの車両を指す総称で、「クロコダイル形機関車」と呼ばれています。主にスイスやオーストリアなど険しい山岳路線を有する地域で、1920年代に製造されました。
100年前の当時としては近代的かつ強力な電気機関車でありながら、ロッド駆動など蒸気機関車の面影が残されているのもこの車両のユニークな点です。
なぜこのような姿になったのか?
それにはアルプスの険しい山々を走らせんがための様々な工夫や技術が必要だったのです。

まるで蒸気機関車のような、電気機関車
1920年代、すでにスイスやオーストリアでは山岳路線の電化も進められていました。
輸送力を上げるためには、より強力な牽引力を持つ電気機関車が求められます。しかしその代償として、特にモー ターや変圧器などの電気部品は大形化し、車両全体の重量も増加していきます。
車両の重量が重くなるということは、同時に線路への負担も大きくなるということです。そこで、線路への負担を軽減するため、動輪の数を増やし、重量を分散する工夫がなされました。また、強い牽引力を得るためには、これらすべての動輪を動かす必要がありました。しかし、カーブの多い山岳地帯では、長い車体だとカーブを曲がりきることができません。そのため、6つの動輪を2つの台車に分け、さらに急カーブへの対応として、車体そのものも前後の台車部分と中央の運転台の3つに分けた構造が採用されました。
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大形化したモーターは、現代の電気機関車のように車軸間に収 めるには大きすぎることから、台車の上に載せることになりました。しかし、この配置ではモーターの力を直接車輪に伝えるのが難しかったため、別の伝達方式が考案されました。それは、モーターで発生した動力を、ギヤボックスを通じて「ジャックシャフト」という中間の軸に伝え、そこから、蒸気機関車のようにロッド(連結棒)を使って動輪に力を伝える仕組みです。
こうした構造のために、前後に大きなボンネットと中央に運転台を持つ、「クロコダイル形」と呼ばれる特徴的なデザインが生まれたのです。
Tips!
クロコダイル形機関車以外にも、現在の機関車のように台車上にモーターを収めることができず、キャブやボンネットにモーターを配置された電気機関車が存在します。
日本では、碓氷峠の補機として登場したED42などに同様の構造が見られます。



レーティッシュ・クロコダイルの誕生

Photo: Axel Bozier
レーティッシュ鉄道は、スイス東部地域のグラウビュンデン州を拠点とする、スイス最 大の私鉄鉄道会社です。起源は100年以上前にさかのぼり、1889年に開業したラントクアルト-ダヴォス鉄道に始まります。
急曲線・急勾配という厳しい路線条件において、当初よりラック式やスイッチバックを用いない粘着式鉄道が採用され、ループ線を多用した特徴的な路線となっています。
そのようなレーティッシュ鉄道の路線での輸送を担うため、クロコダイル形の電気機関車が導入されることになりました。
Ge6/6-I形電気機関車は1921年アルブラ線の電化に伴って導入され、1921年から1929年にかけて全15両が導入されました。最大35‰(パーミル)という急勾配で重量のある列車を牽引するために設計されています。


Photo: Axel Bozier
貨物から客車まで――100年の活躍
レーティッシュ鉄道は旅客輸送だけでなく、貨物輸送も担います。
この歴史的な車輛も例外ではなく、長い100年の歴史の中で貨物牽引から旅客輸送まで様々な役割を担い、人々の暮らしを支えてきました。

レーティッシュのシンボル ――今なお親しまれるクロコダイル
1921年から1929年にわたり、401~415号機の全15両が製造されたクロコダイル。最後に製造された414号機、415号機の2両は定期的な整備を行い、動態保存されています。
単に動態保存されているだけでなく、「このような歴史的な車両を、より多くの人に楽しんでもらいたい」
というレーティッシュ鉄道の思いのもと、毎年夏季にはFilisur(フィリズール)~Davos(ダヴォス)間で定期列車のダイヤに投入され、予約や追加料金なしに誰でも乗車できる列車を運行しています。連結される客車も車齢100年近い歴史的な車両や、夏のスイスを存分に味わえるオープンパノラマ客車などで編成され、地元住民や観光客などから高い人気を集めています。

“レーティッシュクロコダイル”は、鉄道技術、そして鉄道ファンを大切にし続ける同鉄道会社の象徴的な存在といえるでしょう。



レーティッシュ・クロコダイルを、Nゲージで
レーティッシュ鉄道のシリーズが始まった2013年からの12年間、クロコダイルの製品化はKATOにとっても1つの夢、悲願でもありました。
Big BoyやEF55に続く大きなプロジェクトとして、開発部門や設計部門の技術を結集し、特徴的な外観と、RhBシリーズならではの最小通過半径R150mm といった厳しい条件をクリア。実車同様に上下左右に稼働しながら曲線や勾配を走行する構造と、小型コアレスモーターによるスムースな走行性能、クロコダイルと言わしめる特徴的な外観を両立した模型となりました。
今回も新たな挑戦がなされた設計部門に対し、本製品の見どころやポイントを聞いてきました。
200以上の部品数
凸形のNゲージ機関車はチビ凸機関車を除けば過去に類がなく、完全新規設計で部品点数は200を超えるとのことです。
そのため、一つ一つの部品の検証にも多くの時間や手間を要し、小さな車体ながら苦労の多い製品との事です。


